[四国EPO・四国ESDセンターが、みなさんにおすすめしたい!と思った事例をご紹介していきます]
地域の力でよみがえった「王越とんぼランド」
香川県坂出市王越町にある「王越とんぼランド」は、坂出市の東側に位置し、三方を五色台の山々に囲まれ、北は瀬戸内海に面した自然豊かな場所にあります。
ここ「王越とんぼランド」は水田や沼地が多く、素晴らしい自然に囲まれていることから、無数のトンボが飛びかう「トンボの楽園」として地元の方々により保護されてきました。毎年「王越とんぼウォッチング」が開催されたり、近くの王越小学校では自然環境学習の一環として生徒がヤゴをトンボにかえす体験を行うなどしてきました。しかし少子化の影響により、平成23年3月に王越小学校は廃校。多くの方に足を運んでもらう機会が減少したことから、トンボの生息地が一時荒廃しかけるという危機に陥りました。
そんな中、平成29年に旧王越小学校が改修され、「宿泊型野外活動施設 交流の里おうごし」がオープン。その近くにある「王越とんぼランド」も活用すべく、平成30年に地元の住民の方々を中心とした「王越とんぼプロジェクト実行委員会」が発足し、「王越とんぼランド」の再生プロジェクトが始まりました。
トンボが群れ、飛ぶ姿を取り戻すため、地域と行政が一体となり、トンボの専門家やボランティアなど大勢の方々の協力も得て、水辺の環境を整備するとともに、観察しやすいよう遊歩道も作り、トンボの楽園がよみがえりました。令和元年には「王越とんぼランド」リニューアルオープンイベントを行い、今では、「交流の里おうごし」利用者の体験学習プログラムとして里山散策コースの中に組み込まれたり、生涯学習講座として自然観察の会場になるなど坂出市の行事で多く利用されています。その他にも、市内小学校等が課外学習として足を運んでくれるようにもなり、王越町は「トンボの里」と呼ばれていた昔の姿を取り戻しています。
世界や国内でも生息地を奪われ、絶滅や絶滅の危機に瀕する動植物も少なくありません。ここ香川でも条件の良い水辺が失われ、トンボなどの生き物を見る機会も減りつつあります。ぜひ、“とんぼランド”で飛び回るトンボを見ると共に、周囲の自然を体感し、地域の人々の気持ちを感じ取ってください。豊かな自然とたくさんの生き物のつながり(生物多様性)から受ける恵みに気づくことができます。
多様な関係者とともに、地域での循環社会づくりを目指して
■プラント見学の様子 ■エコツアーで小麦種まき体験
森林とまちの活力を創造する!内子バイオマス発電所
内子バイオマス発電所は2018年10月竣工、2019年から本格稼働し、同年4月から四国電力に売電を開始、2021年10月からみんな電力へも売電を開始しました。現在では1年間で一般家庭約2500戸分の電力に相当する約1000kWを発電。森林率約77%である内子町の森林資源を活用した、地域密着型バイオマス発電として注目されています。
※世帯当たり3,254.4kWh/年で算出(出典:電気事業連合会「原子力・エネルギー図画集2015」)

■中央の白い建物が内子バイオマス発電所、その左がペレット製造のプラントです
豊かな森林資源を誇る内子町ですが、人工林は放置された状態が続くと、良質な木材が生産できないばかりか、森林の保水力が弱まったり、表土流出や土砂崩れを起こしたりするなどの危険が高まります。適度な伐採、間伐などが行われることが必要ですが、木材価格の低迷による木材生産の低下とともに、間伐後に回収されなかったり、曲がっているなどの理由で廃棄されたりする未利用材の活用が課題となっていました。
そこで、内子町バイオマスタウン構想のもと、地元の有限会社内藤鋼業が未利用材を活用して木質ペレットを製造し、公共施設のペレットストーブやボイラーなどで利用する取組が始まりました。しかし、冬に需要が限定されてしまうことが課題となり、年間を通して安定供給するために、ペレットによる発電所が構想されたといいます。内子バイオマス発電所は、内藤鋼業を中心に地元の企業が出資、地元金融機関が融資し、シン・エナジー株式会社(神戸市)の設計・施工によって建設されました。ペレットの原料となる原木の供給は、隣接する内子森林組合が担っています。

■視察も受け入れています
木質ペレットの製造にはいくつもの工程があります。まず、原木をチッパーと呼ばれる機械で細かいチップにします。そのままでは水分が多いため、木の皮などを燃やして作った温風で乾燥させ、さらに細かく砕いておが粉にします。おが粉をペレット製造機に入れ、ぎゅっと押し固めて粒状のペレットが作られます。
そして、隣接するバイオマス発電所では、ガス化装置でペレットから発生させたガスを燃料に、発電装置のエンジンを動かして発電します。発電時に出る温水から、温水発電も行っています。
また、ペレット製造時にチップを乾燥させるために燃やす木の皮などから発生する灰は、セメントなどを加えてバイオマスストーンとして再生され、林道の舗装などに活用しています。
ペレットの原料となる原木を集める仕組みにも工夫があります。それが町営の「木こり市場プロジェクト」。出荷者が軽トラで未利用材を森林組合の収集場所へ持ち込むと、1トンあたり8000円で買い取ってもらうことができ、そのうちの5000円は現金で、残りの3000円は地域の50ほどの店舗で使える地域通貨「ドン券」で受け取ります(令和4年3月現在)。令和2年度は576.6トンの出荷があったそうです。このように比較的高額の買い取り価格が設定され、出荷が促されて安定的に原木を入手できるとともに、地域でお金が循環する仕組みが定着しています。
これらの取組が高く評価され、内子バイオマス発電所は令和2年度新エネ大賞(新エネルギー財団会長賞)「地域共生部門」に輝きました。

■内子森林組合に隣接しています
海外に依存する化石燃料を使う発電は、CO2を排出し、地球温暖化の原因になっています。一方、木質バイオマス発電は自然資源からつくられる再生可能エネルギーであり、発電時にCO2が排出されますが、森林で樹木が生育するときにCO2を吸収することから、全体として見れば大気中のCO2の量に影響を与えないので、カーボンニュートラルとされます。また、内子バイオマス発電所は海外や遠い地域から森林資源を購入するのではなく、隣接する内子町内の森林から生じる未利用材を活用することから、運搬などによるCO2の排出や労力などを最小限に抑えることができます。また、森林資源の購入資金が外の地域に流出せずに域内で再投資されることにより、地域の活性化につながります。さらに、地域における森林資源の需要が高まることによって、どんどん森林に人の手が入って整備が進み、健全な森林が保たれ、防災や水の涵養の機能も高まります。このようにプラスの循環が生まれ、町の活性化が進むことが期待されています。

■内子バイオマス発電所の運営を担う皆さん
2022年4月には、町内の龍王地区で「内子龍王バイオマス発電所」が着工予定となっています。内藤鋼業が製造する木質ペレットを使った発電とともに、副産物として発生する熱を温浴施設とフィットネスクラブに供給するコジェネプラントが建設される計画で、内子町におけるバイオマス発電の横展開が始まっています。内子バイオマス発電所は随時見学を受け付けているので、森林資源活用による再生可能エネルギーが創出される現場を体感することができます。
【事業主】内子バイオマス発電合同会社
愛媛県喜多郡内子町寺村2478-1
https://www.symenergy.co.jp/business_ec/uchiko/
【運営管理】有限会社内藤鋼業
http://naito-kogyo.co.jp/