企業が多様なステークホルダーと連携して推進する生物多様性保全活動 東芝ライテック株式会社今治事業所
最近、ネイチャーポジティブ※という言葉を見聞きするようになりました。
「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という世界的な社会目標です。その実現のためには、企業、地方自治体、NPO/NGO、個人などすべての主体が、それぞれの業務や活動において、生物多様性の保全に資する選択をするとともに、保全活動を推進することが求められます。地域における企業の実践事例として、東芝ライテック株式会社※今治事業所(愛媛県今治市)の取組をうかがいました。
東芝グループがネイチャーポジティブの実現に貢献することを目指し、国内外の約60拠点で生物多様性保全活動を推進するとした方針を受け、東芝ライテック株式会社今治事業所(以下、今治事業所)では、織田ヶ浜(愛媛県今治市)において、ウンランやハマビシなど希少植物を含む海浜の生態系保全活動を展開しています。
東芝グループの指針として、各拠点の地域特性や課題に応じた取組を地域のステークホルダーとともに行うこと、活動の際には「連携」「広報」「教育」の視点を盛り込むことが示されています。
この指針を踏まえ、今治事業所では、愛媛県自然保護課・愛媛県生物多様性センターや地元NPOなどから、ウンラン等の保全に係る知見・アドバイスを得るとともに、地域の自治会や近隣の企業に参画を求め、ウンランの生育環境を維持する整地活動をスタートさせました。生育数が減り危機的な状況であったウンランですが、愛媛県生物多様性センターが育苗に取り組み、2015年に今治事業所をはじめとする関係者と地元の富田小学校児童が織田ヶ浜に苗を移植。以降、今治事業所のコーディネートによって、同校4年生を対象に織田ヶ浜の自然観察を行うとともに、2017年からは「織田ヶ浜動植物マップ作り」も継続しています。近年、同校児童は海浜のごみにも注目し、ごみ拾いとともにごみの分析を行っています。さらに、見た目にも美しく、生きものが生息できる織田ヶ浜の環境が維持されることを目指し、啓発活動にも取り組んでいます。
織田ヶ浜は、今治事業所の申請によって、2023年10月、「自然共生サイト」※に認定されました。認定を期に、今治事業所では、織田ヶ浜の生物多様性の魅力と保全活動について、社内をはじめ地域内外への発信にも力を入れています。東芝グループでは、織田ヶ浜の取組をモデルケースに、宇和島工場(愛媛県宇和島市)による同市津島町のサギソウの保全活動、鹿沼工場(栃木県鹿沼市)におけるオオチゴユリの保全活動などが進められています。
今治事業所は、2010年に実施した工場構内の植物生息数調査をきっかけに、生物多様性保全活動に着手し、その後も生きものに詳しい人を事業所の各部署から募って、活動を継続してきました。織田ヶ浜の保全活動が定着し、社外に出向く機会が増えたことから、本年9月、従来の体制をベースに、職員7名による生物多様性保全活動チームが発足。今後5年間を見据え、活動を継続・発展させる方針です。
「夏場、海浜の整地作業はとても暑くてたいへんですが、子どもたちや地域の皆さんが笑顔であれば、苦労も解消されます。自治会や学校、協力企業、行政、NPOなど、皆で連携してやるからこそできているのです」と生物多様性保全活動チームリーダー。織田ヶ浜を舞台に、様々なステークホルダーが連携することによって活動が発展し、持続可能な地域づくりへとつながっています。
※ネイチャーポジティブ ネイチャーポジティブ | ecojin(エコジン):環境省
※東芝ライテック株式会社 https://www.tlt.co.jp/tlt/
東芝グループの照明器具、UVライティング、サイバーフィジカルシステム、電設資材、各
種照明システムなどの製造・サービスを展開している。
※自然共生サイト 自然共生サイト|30by30|環境省
「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のこと。2023年度よりスタート。