[四国EPO・四国ESDセンターが、みなさんにおすすめしたい!と思った事例をご紹介していきます]
環境で大月町を元気にしたい
高知県の最西端にある幡多郡「大月町」。環境省の事業である「地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」が、2022年度からこの町で展開されています。この事業は「環境で地域を元気にする」というコンセプトです。
大月町は海岸部を中心に足摺宇和海国立公園に指定されており、透きとおるように青く美しい海と色とりどりのサンゴ礁に出会える「柏島」をはじめ、「樫西海岸」や「大堂海岸」など海の絶景が拡がります。その豊かな海を支えるのに欠かせない存在である森林は、豊かな栄養分を海へと注ぐ役割を担っています。
大月町では、この森林を舞台に官民が連携して様々な取組を進めています。広葉樹活用学習会やチェーンソー安全講習、薪の販売講習会、自伐型林業研修など、「山に興味を持つ人を増やす」ことがそれぞれの取組の目指すべき目標になっています。
いきなり山の仕事だけで生活が成り立つ人は難しいかもしれませんが、お茶をつくったり黒炭を焼いたり、子どもたちに体験の機会を開いたり、家具をつくったり、チェーンソーを使って作業をする人など、学びと実践を通じた輪が広がっています。「ぼちぼち林業」「山業(さんぎょう)」を増やすという、大月町ではじまった取組に注目しています。
「地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」について詳しく知りたい方は下記HPをご覧ください。
http://chiikijunkan.env.go.jp/tsunagaru/
四国ESDまつり
■「ESD」が公園に集合!
ESD活動推進拠点「善通寺こどもエコクラブ」が呼びかけ人となり、香川県善通寺市の「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園で、最初に「ESDまつり」を開催したのは2016年。「香川ESDまつり」として開催し、その後、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休止していましたが、2023年3月21日、「四国ESDまつり」として再開しました。田代商店、セカンドハンド、高松ユネスコ協会、halqa(はるか)、コープ自然派、香川大学・SteeeP、香川県青年海外協力協会、うどんまるごとコンソーシアム、愛媛ダイビングセンター、ESD実践者が集い、それぞれの活動を紹介する展示、リサイクル商品や自然食品、フェアトレード商品の販売、古着のリメイク、苔玉盆栽づくりの体験など、ESDを実践する人と人が出会い、お互いの活動を知り、ヨコにつながる機会となりました。
その「つながりづくり」は、午前中のプログラム、善通寺第一高等学校生有志による「探究学習の発表」から始まったと言えるでしょう。高校生たちは、図書利用度向上、ウクライナ支援と平和、交通事故予防ロボットといった高校生目線で捉えたテーマ・課題が、どのようにSDGs(持続可能な開発目標)達成につながるのか、調べては動き、動いては分析しながら学び、そこで得たさらなる課題に向き合い、次の動きへと展開するESD実践を発表してくれました。
午後は、高校生たちが全ての展示・参加者にインタビューしながら、それぞれの活動や取組への思いを紹介してくれました。これらを受けて、最後にESDに長く関わる実践者のトークもありました。五岳の里は、2010年、市民の願いが結実して造られた自然公園です。近隣には古墳があり、柑橘類の栽培も行われていたようですが、今は市民が集う公園となりました。桜をはじめ、たくさんの種類の樹木と触れ合い、今の季節はチューリップなど、たくさんの花に囲まれ、ヤギとの触れ合いも体験できる自然公園です。この「四国ESDまつり」開催・参加による心の豊かさを実感できる時が刻まれ、新たなESDの芽が育まれていくことでしょう。
特定非営利活動法人由良野の森
■生きものと共生し、活力を得るフィールド
愛媛県久万高原町二名地区の山間にありながら、県内外といわず、国内外から多様な人々が集う由良野の森。印象的な赤茶色の壁のゲストハウスのかたわらには小さな流れがあり、オタマジャクシやヤゴなどの水生昆虫もいるなと見ていたら、放し飼いのニワトリがそばで何かをついばんでいます。その先の小屋にはヒツジも。さらに小道を進むとクワの林と天然林、少し登るとスギ・ヒノキの人工林など、いろんな植生があり、わくわくしながら森の散策を楽しめます。
よい季節になると、子育て支援の団体が森のようちえんを開催したり、企業がCSRや職員の福利厚生として里地や森林の整備活動を行ったり、ゲストハウスにはお遍路さんや口コミでやって来る旅行者が宿泊したり。程よく人の手が入った自然の中でゆったりと過ごし、リフレッシュするフィールドであり、様々な人との出会い場にもなっています。
一方、中山間地域の集落での暮しは、過疎化が進むことによって地域の担い手としての負担が増える中、イノシシやシカなどの獣害が拡大し、気候変動による大雪や大雨などが多発傾向にあり、地域の持続可能性に不安を感じることが少なくないといいます。このように山積する課題の中でも、50年先を展望して「今着手しなければ」と、由良野の森が推進するのが、「ブナの森づくりプロジェクト」です。

由良野の森のそばを流れる川で沢のぼり!
■ブナの森づくりプロジェクト
全国的に奥山まで人工林が広がっていますが、適切な整備が行き届かなければ、下層植生が失われ、保水力が低下することなどによって、斜面が崩壊して水害をもたらすなどの危険が高まります。そこで、人間が管理しなくても生態系が持続する、かつて奥山にあった自然林の再生を目指す「ブナの森づくりプロジェクト」をスタートさせました。
森の復元を加速させるためには、人工林の伐採跡地に苗を植える必要があります。そこで、その地域にもともとある樹種を選び、種子を採取し、播種し、苗を育てることに取り組んでいます。さらに、復元地の整備、定植、管理に至るまで、地道な取組を展開することとなります。そのために大切にしていることが、多様な立場やスキルを持つ人・組織との協働。例えば種子採取においては、フリースクールや森林保全を行うNPO、アウトドアショップともコラボして、各地の奥山で種を採取しました。育苗については、水やり等の管理を福祉サービス事業所に委託し、障がいのある人の仕事を作り出しています。また、植物や森林の研究者の協力を得て、科学的な知見に基づいて活動を計画し実証するとともに、山林の所有に関する様々な問題には、弁護士や司法書士などの専門家と解決に取り組む体制を構築しています。
関わった人・組織が、奥山の現状や中山間部を守る生活について知り、ともに考えて活動することを通して、それぞれの立場で持続可能な森づくりの担い手となることが大切であると考えているのです。

フリースクールの仲間たちと種拾い
■森の復元を横展開
50年後の社会構造や環境を想定しつつ、中長期のビジョンとしては、放置林の問題、山林における土地所有の問題、木材利用の付加価値の創出など、様々な社会課題も同時に解決する森づくりを目指し、自然再生推進法のもとで、自然再生協議会を立ち上げる方針です。
そして、全国でも森林の整備・維持については同様の課題があるため、まずは四国で「ブナの森づくりプロジェクト」の手法を横展開することを目指し、令和5年2月に「ローカルSDGs四国」において分科会「四国の奥山自然再生協議会準備会」を発足させました。
※ローカルSDGs四国(LS四国)https://ls459.net/
※分科会「四国の奥山自然再生協議会準備会」https://ls459.net/?page_id=4358

森の復元プラットフォームセミナーの様子
自然の中で過ごす時間に興味がある方、由良野の森では、初めてでも参加しやすい「森のおさんぽとおはなし会」などを定期的に実施しています。森から活力を得るとともに、自然との関わり方を見つめなおす機会になるでしょう。
※由良野の森HP https://yuranonomori.jp/