四国のおすすめ
[四国EPO・四国ESDセンターが、みなさんにおすすめしたい!と思った事例をご紹介していきます]

持続可能な森林経営が多面的な生態系サービスを創出 橋本林業

橋本林業は、徳島県の那賀川中~上流域において明治40年ころから植林を始め、4代続く専業の自伐林家であり、現在は家族3人が施業・経営を行っています。

本年度、環境省による「30by30目標」の達成に向けた「OECM」の設定・管理を試行する自然共生サイト(前期)に参加、審査委員会から認定に相当すると評価されており、生物多様性保全の観点からも注目を集めています。

※「30by30目標」
劣化・損失を続ける生物多様性を2030年までに快復の軌道に乗せるために設定が検討されている国際目標で、「2030年までに陸域と海域それぞれの30%を保護地域にする」というもの。

※OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)
「その他の効果的な地域をベースとする手段」と訳され、自然公園・鳥獣保護・保護林などの既存の保護地域ではないが、効果的な生物多様性保全が行われている場所、すなわち「人と自然との共生地域」を指します。

本年11月、山林を歩きながら具体的な施業についてご説明いただく機会を得ました。

橋本林業では、所有する約113haの山林を10等分し、毎年10ha程度に間伐を行うことによって複層林を創出し、平均樹齢は80年程度とのこと。真っ直ぐに育った立派なスギに並び、シイの高木も多く見られ、一般的な人工林の風景とは大きく印象が異なります。「台風や風、雨対策として、尾根には常緑樹を残しています。自然をしっかり観察して施業するように心がけています」。スギ林の低層にクロモジも多く生育し、見上げると樹冠から光が入り込み、気持ちのよい森となっています。

       

■高密度に作業道が敷設され、間伐が行き届き、多様な樹齢の人工林に整備されています

■解説を受け、防災にも貢献する施業について理解を深めました

天然工林として、尾根筋と谷筋を中心に、モミ、ケヤキ、シイ、カシなどが生育する針広混交林が形成されており、250種以上の植物が存在、徳島県版レッドリストに掲載されている植物10種が確認されているそうです。そして、広葉樹の落ち葉は腐葉土となって栄養豊富で保水力の高い土壌をつくり、健康な木を育みます。低木・下草が維持されていることも貢献して保水力が高まり、他の林地と比べて洪水ビーク流量を低下させていることが、専門家らの測量結果から確認されています。

さらにこの山林の大きな特徴は、幅員2.3m前後、切取法高は原則1.4m以内で、高密度に作業道を敷設していること。伐倒した木を2トントラックおよび3トンのフォワーダーで効率よく搬出でき、斜面の強度維持のために負荷が少なく、水の流れに配慮した道づくりが行われています。

「林業においても、時代の流れやはやりがあり、以前は委託して施業を行ってきたことがありますが、今は家族で変わらないものと改善するものを見極めてやっています」。自然と向き合い、長期的な視点を持って日々の施業を行う林業において、経営理念・経営方針を家族で実践されていることが、持続可能な森林経営を実現していると感じました。

森林を歩きながら具体的な施業について解説していただき、間伐の行き届いた多様な樹齢の人工林が維持され、崩壊を起こさず、保水力が高く、生物多様性保全に寄与している美しい森林を創出することができる林業について理解を深めるとともに、OECMの在り方についてもイメージを広げる機会となりました。

小さな林業の大きな可能性

NPO法人84プロジェクトは、2020年度に環境省の地域循環共生圏プラットフォーム事業の採択を受け、2021年度で2カ年事業が終了しました。2022年3月18日には、2カ年事業をしめくくる84フォーラムが、高知県安芸市で開催されました。このフォーラムでは、小さな林業実践者からの報告提案、持続可能な日本の国土づくりを進める上で自伐型林業が果たす防災的な視点からみた役割などが紹介され、地元の関係者とともにSDGsの可能性を考える機会となりました。

自伐型林業を成り立たせる条件に、①林木の成長量を超えない間伐生産での自立、②壊れず使い続けることのできる小さな林内作業道の敷設、があります。中央構造線の南側にあたる高知県の山側の山林は、その条件を考慮するだけでなく、肥沃でミネラル分豊富な恵みを生かすために、破砕帯などの土地要因に対して、配慮ある施業が不可欠であるということを認識しました。

また、同プロジェクトは、森林施業の側面だけでなく、背を向け閉ざされてきた森をデザインや編集の力でわかりやすく伝え、コミュニケーションを快適にする取り組みも継続して進められました。当日のフォーラムの登壇者からは、動画や映像資料を使い、森林管理の仕事を一般の人にわかりやすく伝える必要性を「おかゆ化」という言葉で表現されるなど、デザインが担う役割と可能性を再確認することができました。

この2年間の取り組みで、同プロジェクトは、高知県内のさまざまな自治体や住民等に対し、自伐型林業を伝え、実践者の声を紹介しながら賛同の輪を広げる取り組みを展開してきました。84%の森林率を持つ高知県の森林を持続可能な形でどう活用すべきかの問いに対し、高知県佐川町では、地域おこし協力隊や移住者を中心とした小さな林業の実践者35人が誕生した報告もありましたが、このことは、1つの可視化された成果と言えます。

これらの取組は、2022年度に発行される環境白書にも取り上げられる予定です。また、四国内でも民間取組等と連携した自然環境保全(OECM)の普及啓発が始まることから、先進的な取り組み事例としても、期待が寄せられています。

地域の力でよみがえった「王越とんぼランド」

香川県坂出市王越町にある「王越とんぼランド」は、坂出市の東側に位置し、三方を五色台の山々に囲まれ、北は瀬戸内海に面した自然豊かな場所にあります。

ここ「王越とんぼランド」は水田や沼地が多く、素晴らしい自然に囲まれていることから、無数のトンボが飛びかう「トンボの楽園」として地元の方々により保護されてきました。毎年「王越とんぼウォッチング」が開催されたり、近くの王越小学校では自然環境学習の一環として生徒がヤゴをトンボにかえす体験を行うなどしてきました。しかし少子化の影響により、平成23年3月に王越小学校は廃校。多くの方に足を運んでもらう機会が減少したことから、トンボの生息地が一時荒廃しかけるという危機に陥りました。

そんな中、平成29年に旧王越小学校が改修され、「宿泊型野外活動施設 交流の里おうごし」がオープン。その近くにある「王越とんぼランド」も活用すべく、平成30年に地元の住民の方々を中心とした「王越とんぼプロジェクト実行委員会」が発足し、「王越とんぼランド」の再生プロジェクトが始まりました。

トンボが群れ、飛ぶ姿を取り戻すため、地域と行政が一体となり、トンボの専門家やボランティアなど大勢の方々の協力も得て、水辺の環境を整備するとともに、観察しやすいよう遊歩道も作り、トンボの楽園がよみがえりました。令和元年には「王越とんぼランド」リニューアルオープンイベントを行い、今では、「交流の里おうごし」利用者の体験学習プログラムとして里山散策コースの中に組み込まれたり、生涯学習講座として自然観察の会場になるなど坂出市の行事で多く利用されています。その他にも、市内小学校等が課外学習として足を運んでくれるようにもなり、王越町は「トンボの里」と呼ばれていた昔の姿を取り戻しています。

  

世界や国内でも生息地を奪われ、絶滅や絶滅の危機に瀕する動植物も少なくありません。ここ香川でも条件の良い水辺が失われ、トンボなどの生き物を見る機会も減りつつあります。ぜひ、“とんぼランド”で飛び回るトンボを見ると共に、周囲の自然を体感し、地域の人々の気持ちを感じ取ってください。豊かな自然とたくさんの生き物のつながり(生物多様性)から受ける恵みに気づくことができます。

■王越とんぼランド
https://www.city.sakaide.lg.jp/soshiki/syougaigakusyu/ougoshitonborando.html
 
■「自然がいっぱい!きてみまい 王越とんぼランド」(王越とんぼランド紹介動画)
https://www.youtube.com/watch?v=nMPcw9BRMGU