四国のおすすめ
[四国EPO・四国ESDセンターが、みなさんにおすすめしたい!と思った事例をご紹介していきます]

神山発「まめのくぼプロジェクト」

 中国四国地域の耕作放棄地面積は、経営可能な耕地の約20%(※1)に迫ろうとしており、全国平均と比較するとかなり高めで推移している。この傾向は、四国の山間地域では特に顕著で、人口減少・過疎とあわせ、重要な地域課題である。

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 この課題に向き合い活動を続けているのが、徳島県立城西高校神山校「まめのくぼプロジェクト」である。町内の谷地区の段畑、通称「まめのくぼ」を地域の方から借り受けて栽培を始めたのが2018年。当初は、70年以上神山で継がれている「神山小麦」の栽培からスタートしたそうだ。

 集落を通り抜けた急斜面に広がる段畑は管理面積 約9,000㎡、耕作面積 約2,100㎡に及ぶ。実践の場は、毎年、さまざまな作物が栽培されており、何を植えるかは、生徒同士の話し合いや検討の中で決まる。取材に訪れた日は、ちょうど綿の花が開花していた。小麦やソバの栽培とともに、お茶やビワも植栽されている。
 また、中山間地においては、獣害対策は必須、植栽地の周囲には電気柵がはりめぐらされている。ここではシカとの共生もテーマとなっている。さらに、耕作放棄地を耕地として再生し維持するために、栽培技術の習得や野生動物から作物を守る方法、段畑を維持するための石積みの補修など、やらなければならないことは、沢山ある。それに加えて、有機JAS登録や生物多様性認証にもチャレンジしており、ここはまさに学びと実践の先進地といっても過言ではない。

(※2)

 放棄された農地を再生することが「大変」なのは間違いない。しかし、このプロジェクトに関わる生徒からは、「大変」以上に「まめのくぼが好き」「楽しい」「将来農家をやりたい」という感想や夢を沢山聞くことができた。その原動力は何なのだろう。先輩から引き継いだこと、新たな挑戦とやりがい、地域内の人に知ってもらおうと始めた「まめのくぼのつどい」など、そこには、紛れもない生徒の本気があり、それを受けとめて返してくれる地域の懐の深さ・温かさを実感し、そこにヒントがあるのではと感じた。

もっとみんなに知ってほしい。生徒の思いが地域の力となって、「まめのくぼプロジェクト」の発信は続く。

※1:中四農政局資料https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/bukai/h27_chiho_kondan/chushi/pdf/siryou_2.pdf

※2:写真提供協力(徳島県立城西高校神山校)

企業が多様なステークホルダーと連携して推進する生物多様性保全活動  東芝ライテック株式会社今治事業所

 最近、ネイチャーポジティブ※という言葉を見聞きするようになりました。
「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という世界的な社会目標です。その実現のためには、企業、地方自治体、NPO/NGO、個人などすべての主体が、それぞれの業務や活動において、生物多様性の保全に資する選択をするとともに、保全活動を推進することが求められます。地域における企業の実践事例として、東芝ライテック株式会社※今治事業所(愛媛県今治市)の取組をうかがいました。

 

 東芝グループがネイチャーポジティブの実現に貢献することを目指し、国内外の約60拠点で生物多様性保全活動を推進するとした方針を受け、東芝ライテック株式会社今治事業所(以下、今治事業所)では、織田ヶ浜(愛媛県今治市)において、ウンランやハマビシなど希少植物を含む海浜の生態系保全活動を展開しています。
 東芝グループの指針として、各拠点の地域特性や課題に応じた取組を地域のステークホルダーとともに行うこと、活動の際には「連携」「広報」「教育」の視点を盛り込むことが示されています。

 この指針を踏まえ、今治事業所では、愛媛県自然保護課・愛媛県生物多様性センターや地元NPOなどから、ウンラン等の保全に係る知見・アドバイスを得るとともに、地域の自治会や近隣の企業に参画を求め、ウンランの生育環境を維持する整地活動をスタートさせました。生育数が減り危機的な状況であったウンランですが、愛媛県生物多様性センターが育苗に取り組み、2015年に今治事業所をはじめとする関係者と地元の富田小学校児童が織田ヶ浜に苗を移植。以降、今治事業所のコーディネートによって、同校4年生を対象に織田ヶ浜の自然観察を行うとともに、2017年からは「織田ヶ浜動植物マップ作り」も継続しています。近年、同校児童は海浜のごみにも注目し、ごみ拾いとともにごみの分析を行っています。さらに、見た目にも美しく、生きものが生息できる織田ヶ浜の環境が維持されることを目指し、啓発活動にも取り組んでいます。

 織田ヶ浜は、今治事業所の申請によって、2023年10月、「自然共生サイト」※に認定されました。認定を期に、今治事業所では、織田ヶ浜の生物多様性の魅力と保全活動について、社内をはじめ地域内外への発信にも力を入れています。東芝グループでは、織田ヶ浜の取組をモデルケースに、宇和島工場(愛媛県宇和島市)による同市津島町のサギソウの保全活動、鹿沼工場(栃木県鹿沼市)におけるオオチゴユリの保全活動などが進められています。

 今治事業所は、2010年に実施した工場構内の植物生息数調査をきっかけに、生物多様性保全活動に着手し、その後も生きものに詳しい人を事業所の各部署から募って、活動を継続してきました。織田ヶ浜の保全活動が定着し、社外に出向く機会が増えたことから、本年9月、従来の体制をベースに、職員7名による生物多様性保全活動チームが発足。今後5年間を見据え、活動を継続・発展させる方針です。
 「夏場、海浜の整地作業はとても暑くてたいへんですが、子どもたちや地域の皆さんが笑顔であれば、苦労も解消されます。自治会や学校、協力企業、行政、NPOなど、皆で連携してやるからこそできているのです」と生物多様性保全活動チームリーダー。織田ヶ浜を舞台に、様々なステークホルダーが連携することによって活動が発展し、持続可能な地域づくりへとつながっています。

 

※ネイチャーポジティブ ネイチャーポジティブ | ecojin(エコジン):環境省
※東芝ライテック株式会社 https://www.tlt.co.jp/tlt/
東芝グループの照明器具、UVライティング、サイバーフィジカルシステム、電設資材、各
種照明システムなどの製造・サービスを展開している。
※自然共生サイト 自然共生サイト|30by30|環境省
「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のこと。2023年度よりスタート。

 

四国の多文化共生を考える

少子高齢化や人口減少が進む四国でも、在住外国人の方が増えてきました。高知県内では、2023年6月の時点で5,663人という統計(※)もあります。四国の多文化共生もいよいよ本腰を入れて取り組む時期に来ています。(※出入国在留管理庁ホームページ参考)

そんな中、「まぜこじゃKOCHI土佐と世界をいっちきちもんちきち」という軽快な方言を冠したイベントが、高知大学次世代地域創造センター主催で2024年1月20日に開催されました。「いっちきちもんちきち」とは、土佐弁(高知の方言)で行ってきて戻ってくるという意味です。この企画は、地域の国際人材ネットワーク形成事業・高知大学「地域×国際」セミナーとして2023年度から始まり、今回で第2回となります。参加者は約100名、高知県内はもとより四国、四国外から国際交流や地域づくり等に関心のある地域の関係者や企業、自治体など、さまざまな主体の参加が見られました。

 

当日は「地域活性化×国際化」を在住外国人の方と一緒に考え、横断的なグローカル人材のネットワーク形成を進めようと、トランスローカルな学びをテーマとした基調講演や地域での実践報告、3つのテーマにわかれた分科会でのセッションが行われました。このテーマで関係者が集まる機会は、少ないとみられ、活発な交流の機会となりました。

 
 <アイスブレイクでのしばてん踊り>

多文化共生の動きは、今後も加速化するとみられます。今回は地域活性化がテーマでしたが、他にもさまざまなテーマでの企画に関する情報が、四国内でも見られるようになりました。点から線・面へ、四国の多文化共生を身近に感じてもらうための取組は続きます。