[四国EPO・四国ESDセンターが、みなさんにおすすめしたい!と思った事例をご紹介していきます]
「地域が学べば地域が育つ」愛媛ダイビングセンターの取組
「青い海中世界へ誘う癒しの海楽園 海好きなダイバーが集う憩いの隠れ家」
愛媛ダイビングセンターのホームページを開くとまず飛び込んでくるのはこのフレーズ。実はここ、ただのダイビングセンターではありません。
愛媛ダイビングセンターのある愛媛県の南予地域は長く海の豊かさを享受し、海と共にその歴史を刻んできた土地です。しかし他の地方同様、少子高齢化や海の仕事に就く若い世代の減少など、さまざまな課題を抱えています。そんな中、「地域が学べば地域が育つ」を合言葉に、地域の未来を考えるためのアクションを起こそうと、愛媛ダイビングセンターと地域の方々が立ち上がりました。
暑さもピークを迎えた8月3日。八幡浜市水産物地方卸売市場(八幡浜市魚市場)に18の団体が集まって出展し、楽しみながら地域を学ぶSDGsイベントが開催されました。気候変動教育、生産消費教育、生物多様性、エシカル消費、減災・防災、多文化共生、海洋・平和教育などさまざまな切り口で地域の魅力を発信し、SDGsにつながる学びを提供。特に海の仕事をしている人たちは温暖化の影響をリアルに感じており、それらを具体的に知ることで温暖化は他人事ではないこと、自分の住む地域の在り方を考える必要があることを誰もが感じた一日となりました。
「地球温暖化のように世界各地で起きている大きな変化については騒がれているが、注視(モニタリング)しなければならない問題は、足元で起きている小さな変化だということ、生物多様性の異変は、「生命の環」として「観光業」「地域振興」へのダメージ(地域経済の損失)へと繋がること、SDGs17の目標達成へ向けての活動が注目されているが、自分たちで活動を起こさなければ変革は起こり得ないこと(愛媛ダイビングセンターHPより抜粋)」
このメッセージを教育現場でも発信し、持続可能な社会づくり担い手を育む教育を実践していることから、愛媛ダイビングセンターは地域ESD拠点にも登録されており、その取り組みは県内外さまざまなところで紹介されています。
- <松柏中学校>
- <VR映像活用授業>
令和4年2月、愛媛ダイビングセンターの運営者が主体となって一般社団法人地方創生機構を設立し、海の環境課題に取り組んできた経験を地域づくりにも展開しています。西日本で初めてとなる全国8団体目の5省共管の環境教育等支援団体に指定され、また、令和6年度「令和の里海づくりモデル事業(環境省)」にも愛媛県で初めて採択されました。
愛媛ダイビングセンターと地方創生機構は、今後ICT教育を通じた取組等も視野に入れて活動する方針で、ここ南予地域における両団体の動きが、同じような課題を抱える多くの地方に波及効果を及ぼすことが期待されます。
- <サンゴ保全>
- <海底清掃>
※愛媛ダイビングセンター http://wwwd.pikara.ne.jp/ehime-dive/
※一般社団法人地方創生機構 https://region.jpn.org/
佐川おもちゃ美術館
四国には、おもちゃ美術館が4箇所ある。
その中で、2023年にオープンしたのが、高知県佐川町にある佐川おもちゃ美術館だ。
佐川町といえば、植物学者・牧野富太郎博士の出身地である。牧野博士にちなんで館内は「木育」だけでなく「植育」をテーマとした内装、什器、おもちゃが充実している。博士の愛した「バイカオウレン」を模した木の花が咲きこぼれるエリアもあり、よく考えられた空間デザインとなっている。
取材に訪れたのは、2024年8月、夏休み期間中で、沢山の方が来場していた。子どもから大人、お年寄りまで、高知県産材がふんだんに使われた館内でくつろぎながら、多世代交流を楽しんでいた。空間を取り巻く建物に目を向けると、梁の部分にはサスペントラス構造が取り入れられ、集成材に曲げがほどこされたドームや土佐組子の階段など、伝統と現代の技術が絶妙なバランスで組み合わさっている。名前だけ聞くと、子どもたちが主役の遊べる美術館というイメージを抱くが、大人にとっても沢山の見所と発見がある美術館だ。
現在、おもちゃ美術館は全国にあり、東京おもちゃ美術館の総合監修のもと、それぞれの地域が設立し、「姉妹おもちゃ美術館協定」に基づき双方が連携しながら運営している。おもちゃ美術館のコンセプトに沿いつつ、地域の文化や歴史、特色もふんだんに盛り込まれている。そのため、1カ所訪問すると他の美術館にも行ってみたくなる。
四国には、徳島県那賀町、徳島市、高松市にある。ぜひ、皆さんに四国のおもちゃ美術館めぐりをおすすめしたい。
写真提供:佐川おもちゃ美術館
神山発「まめのくぼプロジェクト」
中国四国地域の耕作放棄地面積は、経営可能な耕地の約20%(※1)に迫ろうとしており、全国平均と比較するとかなり高めで推移している。この傾向は、四国の山間地域では特に顕著で、人口減少・過疎とあわせ、重要な地域課題である。

(※2)
この課題に向き合い活動を続けているのが、徳島県立城西高校神山校「まめのくぼプロジェクト」である。町内の谷地区の段畑、通称「まめのくぼ」を地域の方から借り受けて栽培を始めたのが2018年。当初は、70年以上神山で継がれている「神山小麦」の栽培からスタートしたそうだ。
集落を通り抜けた急斜面に広がる段畑は管理面積 約9,000㎡、耕作面積 約2,100㎡に及ぶ。実践の場は、毎年、さまざまな作物が栽培されており、何を植えるかは、生徒同士の話し合いや検討の中で決まる。取材に訪れた日は、ちょうど綿の花が開花していた。小麦やソバの栽培とともに、お茶やビワも植栽されている。
また、中山間地においては、獣害対策は必須、植栽地の周囲には電気柵がはりめぐらされている。ここではシカとの共生もテーマとなっている。さらに、耕作放棄地を耕地として再生し維持するために、栽培技術の習得や野生動物から作物を守る方法、段畑を維持するための石積みの補修など、やらなければならないことは、沢山ある。それに加えて、有機JAS登録や生物多様性認証にもチャレンジしており、ここはまさに学びと実践の先進地といっても過言ではない。

(※2)
放棄された農地を再生することが「大変」なのは間違いない。しかし、このプロジェクトに関わる生徒からは、「大変」以上に「まめのくぼが好き」「楽しい」「将来農家をやりたい」という感想や夢を沢山聞くことができた。その原動力は何なのだろう。先輩から引き継いだこと、新たな挑戦とやりがい、地域内の人に知ってもらおうと始めた「まめのくぼのつどい」など、そこには、紛れもない生徒の本気があり、それを受けとめて返してくれる地域の懐の深さ・温かさを実感し、そこにヒントがあるのではと感じた。
もっとみんなに知ってほしい。生徒の思いが地域の力となって、「まめのくぼプロジェクト」の発信は続く。
※1:中四農政局資料https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/bukai/h27_chiho_kondan/chushi/pdf/siryou_2.pdf
※2:写真提供協力(徳島県立城西高校神山校)