四国ESDシンポジウム
2月28日に愛媛県新居浜市にて四国ESDシンポジウムが開催された。今年で2回目となるシンポジウムでは、学校や多様な主体と連携し、各県の特色を取り入れた教育プログラムの作成、実証授業が発表された。
愛媛からは、松山市の小学2年生を対象とした「よいまちつくろう!~菜の花プロジェクト~」という題名のもと、菜の花の栽培を通して、植物が種から花を咲かせるまで成長する過程を観察する様子が紹介された。授業の一環で出会った地域の人々から話を聞き、自分たちで考え、意見を共有した。また、栽培した菜の花をおかゆにして食べる際には、紙やナイロンで食器を作るなどして、防災の視点も配慮した。さらに、栽培した菜の花は、JR松山駅に設置され、取組みについて地域の方に知ってもらうことができたようだ。
香川のプログラム「山・里・まちのつながりから未来を考えよう~善通寺弘田川調査から分かること」では、善通寺市の中学1年生が身近に流れる弘田川について、生徒の家族や地域の住民に聞き取りを行い、身近に流れる川の今と昔の違いを知ることから始めた。実際に、生徒たちは1月に川に入り、生息している生物を自分の目で観察、つながりを感じることができたようだ。その後、生き物と人間の共生についてグループごとの話し合いが行われた。
徳島では「暮らしの中の水を見つめ直そう~アフリカから学ぶ、ふるさとの安全な水と豊かさ」をテーマに、三好市の中学1年生が、日本から遠く離れたアフリカと日本の「水」事情を学び、子どもたちの身近を流れる吉野川について理解を深めるプログラムを実施した。同じアフリカでも都市部には蛇口のついた台所がある一方、農村部では水を得るために子どもたちが水汲みをしている現状があるなど、同じ地域でも違いがあることや10リットルの水を実際にバケツに入れて運ぶ体験を通して、アフリカの子どもたちの大変さを実感した。また、アフリカ支援を行う団体や環境カウンセラーから安全な水の確保が困難な地域があることや身近に流れる吉野川の水質は良好で、恵まれていることを科学的に理解し、地域の資源の豊かさを再認識した。
高知では香美市の小学5年生が、旅する蝶アサギマダラの観察を通して、自然環境の多様性や命の大切さを学んだ。マーキングを行うことでアサギマダラが持つ生命力を知るとともに、卵やサナギなどの観察を行い、成長段階が見分けられるようにもなった。また、住民から話を聞くことで、地域の歴史や文化を学ぶことができた。このプログラムを通して、生徒たちは「部分」ではなく「全体」を考えることができるようになったとのこと。
以上、いずれの取り組みも子どもたちは、「今まで考えることのなかった現状を知る」、「それぞれの視点で気づいたこと」から「自分達ができることを考える」、「実行に結びつける」という一連の流れを体験した。
ESDの視点は、多くの教科に関連するところがあり、工夫次第で通常の授業に取り入れることもできる。外部の協力などを得、地域に根差したプログラムを作ることで、子どもたちの視点の多様化やコミュニケーション能力の向上、ふるさとに対する愛着など、様々な成果が得られる。
ESDの取組みが学校をはじめ、社会教育の現場に浸透することを期待しつつ、引き続き、普及啓発に努めたい。