特定非営利活動法人由良野の森
■生きものと共生し、活力を得るフィールド
愛媛県久万高原町二名地区の山間にありながら、県内外といわず、国内外から多様な人々が集う由良野の森。印象的な赤茶色の壁のゲストハウスのかたわらには小さな流れがあり、オタマジャクシやヤゴなどの水生昆虫もいるなと見ていたら、放し飼いのニワトリがそばで何かをついばんでいます。その先の小屋にはヒツジも。さらに小道を進むとクワの林と天然林、少し登るとスギ・ヒノキの人工林など、いろんな植生があり、わくわくしながら森の散策を楽しめます。
よい季節になると、子育て支援の団体が森のようちえんを開催したり、企業がCSRや職員の福利厚生として里地や森林の整備活動を行ったり、ゲストハウスにはお遍路さんや口コミでやって来る旅行者が宿泊したり。程よく人の手が入った自然の中でゆったりと過ごし、リフレッシュするフィールドであり、様々な人との出会い場にもなっています。
一方、中山間地域の集落での暮しは、過疎化が進むことによって地域の担い手としての負担が増える中、イノシシやシカなどの獣害が拡大し、気候変動による大雪や大雨などが多発傾向にあり、地域の持続可能性に不安を感じることが少なくないといいます。このように山積する課題の中でも、50年先を展望して「今着手しなければ」と、由良野の森が推進するのが、「ブナの森づくりプロジェクト」です。

由良野の森のそばを流れる川で沢のぼり!
■ブナの森づくりプロジェクト
全国的に奥山まで人工林が広がっていますが、適切な整備が行き届かなければ、下層植生が失われ、保水力が低下することなどによって、斜面が崩壊して水害をもたらすなどの危険が高まります。そこで、人間が管理しなくても生態系が持続する、かつて奥山にあった自然林の再生を目指す「ブナの森づくりプロジェクト」をスタートさせました。
森の復元を加速させるためには、人工林の伐採跡地に苗を植える必要があります。そこで、その地域にもともとある樹種を選び、種子を採取し、播種し、苗を育てることに取り組んでいます。さらに、復元地の整備、定植、管理に至るまで、地道な取組を展開することとなります。そのために大切にしていることが、多様な立場やスキルを持つ人・組織との協働。例えば種子採取においては、フリースクールや森林保全を行うNPO、アウトドアショップともコラボして、各地の奥山で種を採取しました。育苗については、水やり等の管理を福祉サービス事業所に委託し、障がいのある人の仕事を作り出しています。また、植物や森林の研究者の協力を得て、科学的な知見に基づいて活動を計画し実証するとともに、山林の所有に関する様々な問題には、弁護士や司法書士などの専門家と解決に取り組む体制を構築しています。
関わった人・組織が、奥山の現状や中山間部を守る生活について知り、ともに考えて活動することを通して、それぞれの立場で持続可能な森づくりの担い手となることが大切であると考えているのです。

フリースクールの仲間たちと種拾い
■森の復元を横展開
50年後の社会構造や環境を想定しつつ、中長期のビジョンとしては、放置林の問題、山林における土地所有の問題、木材利用の付加価値の創出など、様々な社会課題も同時に解決する森づくりを目指し、自然再生推進法のもとで、自然再生協議会を立ち上げる方針です。
そして、全国でも森林の整備・維持については同様の課題があるため、まずは四国で「ブナの森づくりプロジェクト」の手法を横展開することを目指し、令和5年2月に「ローカルSDGs四国」において分科会「四国の奥山自然再生協議会準備会」を発足させました。
※ローカルSDGs四国(LS四国)https://ls459.net/
※分科会「四国の奥山自然再生協議会準備会」https://ls459.net/?page_id=4358

森の復元プラットフォームセミナーの様子
自然の中で過ごす時間に興味がある方、由良野の森では、初めてでも参加しやすい「森のおさんぽとおはなし会」などを定期的に実施しています。森から活力を得るとともに、自然との関わり方を見つめなおす機会になるでしょう。
※由良野の森HP https://yuranonomori.jp/