四国のおすすめ [徳島県] 2022/12/27

持続可能な森林経営が多面的な生態系サービスを創出 橋本林業

橋本林業は、徳島県の那賀川中~上流域において明治40年ころから植林を始め、4代続く専業の自伐林家であり、現在は家族3人が施業・経営を行っています。

本年度、環境省による「30by30目標」の達成に向けた「OECM」の設定・管理を試行する自然共生サイト(前期)に参加、審査委員会から認定に相当すると評価されており、生物多様性保全の観点からも注目を集めています。

※「30by30目標」
劣化・損失を続ける生物多様性を2030年までに快復の軌道に乗せるために設定が検討されている国際目標で、「2030年までに陸域と海域それぞれの30%を保護地域にする」というもの。

※OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)
「その他の効果的な地域をベースとする手段」と訳され、自然公園・鳥獣保護・保護林などの既存の保護地域ではないが、効果的な生物多様性保全が行われている場所、すなわち「人と自然との共生地域」を指します。

本年11月、山林を歩きながら具体的な施業についてご説明いただく機会を得ました。

橋本林業では、所有する約113haの山林を10等分し、毎年10ha程度に間伐を行うことによって複層林を創出し、平均樹齢は80年程度とのこと。真っ直ぐに育った立派なスギに並び、シイの高木も多く見られ、一般的な人工林の風景とは大きく印象が異なります。「台風や風、雨対策として、尾根には常緑樹を残しています。自然をしっかり観察して施業するように心がけています」。スギ林の低層にクロモジも多く生育し、見上げると樹冠から光が入り込み、気持ちのよい森となっています。

       

■高密度に作業道が敷設され、間伐が行き届き、多様な樹齢の人工林に整備されています

■解説を受け、防災にも貢献する施業について理解を深めました

天然工林として、尾根筋と谷筋を中心に、モミ、ケヤキ、シイ、カシなどが生育する針広混交林が形成されており、250種以上の植物が存在、徳島県版レッドリストに掲載されている植物10種が確認されているそうです。そして、広葉樹の落ち葉は腐葉土となって栄養豊富で保水力の高い土壌をつくり、健康な木を育みます。低木・下草が維持されていることも貢献して保水力が高まり、他の林地と比べて洪水ビーク流量を低下させていることが、専門家らの測量結果から確認されています。

さらにこの山林の大きな特徴は、幅員2.3m前後、切取法高は原則1.4m以内で、高密度に作業道を敷設していること。伐倒した木を2トントラックおよび3トンのフォワーダーで効率よく搬出でき、斜面の強度維持のために負荷が少なく、水の流れに配慮した道づくりが行われています。

「林業においても、時代の流れやはやりがあり、以前は委託して施業を行ってきたことがありますが、今は家族で変わらないものと改善するものを見極めてやっています」。自然と向き合い、長期的な視点を持って日々の施業を行う林業において、経営理念・経営方針を家族で実践されていることが、持続可能な森林経営を実現していると感じました。

森林を歩きながら具体的な施業について解説していただき、間伐の行き届いた多様な樹齢の人工林が維持され、崩壊を起こさず、保水力が高く、生物多様性保全に寄与している美しい森林を創出することができる林業について理解を深めるとともに、OECMの在り方についてもイメージを広げる機会となりました。