2016/08/27

サバイエンスキャンプ夏2016

夏イベントの代名詞のひとつ、キャンプ。徳島県では、サバイバルとサイエンスの要素を掛け合わせた一風変わったサバイエンスキャンプ(とくしまエコキャンプ実行委員会主催)というものが毎年開催されていると聞き、徳島県那賀町の鷲敷野外活動センターへ取材に赴いた。

 「一風変わった」と前置きしたが、何が変わっているのか。実はこのキャンプ、子どもの主体性を開かせることを最大の目的としており、詳細な内容は予め設けられていない。予定表を見せていただいたが、実に簡素。何が行われるのか、外部の者が見ただけで判別できるものは少ない。

 取材は、3泊4日のキャンプ2日目におじゃましたのだが、この日の予定は、「ラフティング」、「エコプログラム」、「フリープログラム」、「ナイトプログラム」とだけ書かれてあった。

午前午後のチームに分かれ、ラフティングとエコプログラム(この日は、徳島環境カウンセラー協議会の津川なち子氏によるフードマイレージ講座)に向かう班がある中、フリープログラムとしてお菓子作りやボール遊びなど他のことを始める子どもたちの姿も見られた。

  フードマイレージ講座   OLYMPUS DIGITAL CAMERA

とくしまエコキャンプ実行委員会委員長の鈴鹿剛氏に訊ねると、「子どもたちが自発的に提案してきたプログラムは、危険がない限り採用してやらせます。こちらが準備したプログラムに参加するかどうかも、子ども達自身で選択させます。」とのこと。

詳細な内容がないと前述したが、実は全くの白紙という意味ではない。ネタをいくつか事前に準備してある。しかし、それに子どもたちが興味を持つかは分からない。準備していても出番のないネタも当然あるし、準備していないプログラムを子どもから提案されることもある。あくまでも、子どもの主体を尊重してその日のタイムスケジュールが組まれていく。

 こうなってくると、スタッフには臨機応変、突発的な動きを求められるはずなのに、意外とゆったりと過ごす姿が見られた。これに関しては、鈴鹿氏から印象的な回答が得られた。

「朝のミーティングをとにかく大切にしている。ここをきちんとこなすことで1日の自由(フリー)が決まる。朝のミーティングがうまくいかないと、その日1日が不自由になるのです。」

時間をきちんと守るなど、「自由の枠組み」を与えて自分で考えさせ、自発的な行動へと導く。ここでスタッフにはミーティングの仕切り方を、子どもたちには自由を得るための決まりを身に付けさせていることが分かった。

また、スタッフの人材育成も兼ねている点において特筆すべきは、キャンプという子どもの心が開放される場において、スタッフには“子どもの心に寄り添う”ことに重点を置かせ、対応させているということだ。これから中心的指導者として育つスタッフにとって、このキャンプは子ども達一人ひとりとの距離の詰め方を体得する場にもなっている。

 参加している子ども達はリピーターが多く、スタッフの中にも最初は参加者だったが学年が上がることでスタッフとして加わっている人も見られた。「なんでもやりたい放題で自由だから」ではなく、「思い切り自由を楽しめる方法」を体験を通して身に付けることができるからこそ何度でも参加したくなるのだろう。スタッフ含め参加者約70名の笑顔が、陽射しよりもいきいきと輝いているキャンプだった。

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