四国のすごい! Shikoku’s that is awesome! 了不起的四国![四国EPOがすごいと思った四国の環境情報をお知らせします]
「四国のすごい!」英語版ドイツ語版

馬原アカリ医学研究所(徳島県阿南市)

日本で唯一のダニ専門の研究施設が四国にあることをご存知でしょうか。

徳島県阿南市にある「馬原アカリ医学研究所」。温かみすら感じる“アカリ”とは、実は学名(ラテン語)でダニのこと。こちらでは、日本紅斑熱をはじめとするダニ媒介性疾患の検査や診療支援、研究が行われています。

まだみなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか、一時期メディアで多く取り上げられた「マダニ」。リケッチア(※)の一種である、リケッチア・ジャポニカの菌を持つマダニに刺されると日本紅斑熱を発症します。この日本紅斑熱を発見したのが、馬原医院院長の馬原文彦氏です。この発見は、国内のみならず国際学会においても大きく取り上げられました。馬原氏の長年にわたる臨床治療や基礎的研究により確立された日本紅斑熱の治療法は、多くの医療現場で応用されています。

実は過去、日本には唯一のダニの民間研究施設「大原綜合病院附属大原研究所」がありましたが、2012年に88年の歴史に幕を閉じることとなり、長年培われた知識や経験が失われてはいけないと、馬原氏が診療所の近くに馬原アカリ医学研究所を開設しました。大原研究所で主任研究員を務め、30年近く馬原氏と共同研究を重ねてきた藤田博己氏を所長として迎え、新たな研究活動をスタートさせたのです。併設して「馬原ダニの資料館」もあります。

「ダニ」と聞くと、抵抗を感じる人が多いと思います。私もそうでしたが、藤田氏からダニの生態について説明を受け、アカリワールドを知れば知るほど面白く、奥深い分野だと感心してしまいました。阿南市の教育委員会も、阿南市特有の教育の場として小中学校へ利用を推奨しています。

隣接して、おしゃれなカフェ(あかりカフェ)もあります。みなさんも是非、アカリワールドに触れてみてください。

※馬原アカリ医学研究所の連絡先:0884-36-3601

リケッチアとは、Rickettsia属の微生物の総称。ダニ等を媒介とし、ヒトに各種リケッチア症を引き起こす。


第5回四国生物多様性会議in西条「西条市の自然をめぐるエクスカーション!」

四国生物多様性ネットワーク(※)が例年開催している四国生物多様性会議、今年度は12月5日に愛媛県西条市で開催されました。翌6日にはエクスカーションが同地において実施され、今回はその内容を紹介します。

※四国生物多様性ネットワークとは、四国における生物多様性の保全活動を行う様々な主体の連携を促進し、豊かな自然環境の保全、自然と人が調和した社会基礎の構築を目指すネットワークです。

 

1.うちぬきウォークラリー

石鎚山系の伏流水・うちぬきの恵み豊かな、西条市アクトピア水系を西条自然学校の山本貴仁氏やスタッフの方の解説のもと、自然観察を行いました。同地区はいたるところから湧水があふれており、透明度の高い水の中にたくさんの魚影を確認しました。水草もたくさんありましたが、そのほとんどは外来種との説明を受けました。料理などで使われるクレソンなどの根が台所から流れ着き、繁殖することもあるようです。家庭やマンションでも地下から水をくみ上げて使用しているところもあり、西条市が水に恵まれていることがわかります。泉はいつもきれいに保たれ、「地域の自慢の泉」とお話になる住民の方の様子が印象的でした。誇りをもって、地域の環境保全することの原点を垣間見たような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

2.神秘のシダ・コケ・ミステリーエコツアー

最初に訪れたのは、西条市丹原町の山中にある集落跡です。こちらには、もともと30世帯程が暮らしていましたが、道路がつかなかった為、10年前に最後の世帯が山を下りたことにより廃集落となりました。集落跡への険しい道中には、数多くの美しいシダやコケが自生しており、シダだけでも80種類が確認されているとのこと。中には雑種のシダもあり、案内人の小澤潤氏(NPO森からつづく道副代表)から、「里と人と自然が結びつき、人の生活の中で生まれた雑種。これこそ里山のシダと言ってよいだろう。」と説明を受けました。また、集落の人々が山林を管理し、有害鳥獣からも山を守っていたが、集落消失後は山が荒れ始め、イノシシが餌を求めて山を下りるようになったとの説明を受け、近年、町での被害が広がりつつある獣害への知見を深めました。また、集落跡には、高いものでは背丈以上にもなる石垣があり、すべて手作業で築かれた歴史を振り返りながら、先人の知恵と努力に息をのみました。

 

 

 

 

 

 

 

次に足を運んだのは千原鉱山跡。目的地までは、道らしい道もなく、山の斜面や崖を分け下りながら進んで、やっとの思いで辿り着きました。実はここは、世界中の研究者を魅了するコケの聖地だそうで、深緑のイワマセンボンゴケが岩にびっしりと生え広がる光景は圧巻でした。道のりが本当に厳しく大変だったのですが、人が近寄りづらいからこそ守られている生態系に感動しました。

さらにここでは、岩場の所々に銅が浸み出した茶色い変色が見られ、その近くにはカナヤマシダが生えていました。昔より山師たちは、この植物を頼りに銅を探し出していたそうで、人が自然から受けていた恩恵と知恵に触れることができました。

人と自然がつながるからこそ保たれる里地里山の調和と、人が余計な介入をしないからこそ保たれる生態系環境。自然の豊かさについて、より深く考える良い機会となりました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

四国に広がる「こどものまち」~高知、徳島、愛媛の取り組みから~

子どもたちが楽しみながら世の中の仕組みを学ぶ取り組みが四国内で広がっています。発端はドイツのミニミュンヘンの取り組みですが、今年も四国各地でさまざまな特色のある「こどものまち」が開催されました。今回は愛媛、徳島、高知の取り組みを紹介します。

【愛媛県:こどもタウンin姫山小学校】

「こどもタウンin姫山小学校」は11月23日(月・祝)に開催されました。主催は、松山市清水地区で実施するに当たり、NEXT CONECTIONが清水地区まちづくり協議会と立ち上げた「こどもタウンプロジェクト実行委員会」。中心となったNEXT CONECTIONの越智さんは、この活動が地域の子どもたちが異年齢間の育ちあう場になることを期待しており、そこで地域のコアとなる学校との連携を重視して開催に至りました。

参加した子どもは姫山小学校の児童を中心に約100名で、低学年が多かったようです。子どもたちはまず会場を見学し、その仕組みについて学びます。その後、ハローワークで仕事を選び、決められた時間働きます。働いた後は銀行でこのまちの通貨「イット」をもらえます。1時間で10イットの給料で、その中から税金を支払います。残ったお金でゲームをしたり食事をすることも、銀行に預金もできます。もちろん働く子もいます。新聞社では実際にメモ帳を片手に取材。その後、新聞を作成・発行します。美容師の仕事では、大人のお客さんのヘアスタイルを整え、パーティ用のヘアスタイルが仕上がりました。舞台では劇団シアター「ネコ」による演劇が繰り広げられ、子どもたちは協力し合って観客からのお題を即興で表現します。それぞれプロの専門家が子どもたちの体験を支えています。また、ここでは保護者も来場できます。働くのは子どもですが、そのサービスの対象者となり、子どもの体験の機会を増やすとともに、この事業の狙いを共有していきます。

自ら考え、繋がり、表現できる子どもを育てる取り組みの一つとして期待されます。

 

 

 

 

 

 

 

【徳島県:うずっこタウン】

今年初めて7月20日(月)に開催されました。対象は小学3年生~中学3年生で、親子で参加できます。主催は「とくしま県民活動プラザ」、「社会福祉協議会」、「徳島市市民活力開発センター」。開催場所は地元のショッピングセンターのフロアです。

特徴的なのは、単なる職業体験ではなく、NPOの協力による社会貢献活動の体験です。ドイツ語で歌う「第九」や、食品衛生などを学び、食べ物の調理・販売を行ったり、ごみの分別回収などの体験が全部で14。体験メニューはあらかじめ提示され、子どもたちは参加申し込みの際に登録する仕組みです。仕事が終わると地域通貨「プララ」がもらえ、タウン内で販売している食べ物や小物などを購入する時に使えます。NPOの得意な活動を活かした取り組みで、約50名の子どもが参加しました。

【高知県:とさっ子タウン】

これまで7回開催されている「とさっ子タウン」は、毎年8月第3土日の2日間、開催されています。この事業の主催は、「とさっ子タウン実行委員会」「高知市市民活動サポートセンター」「NPO法人NPO高知市民会議」。「こどものチカラを信じよう」を合言葉に集まった高校・大学生を中心とした実行委員約100名が年間を通して会議を実施し、運営費から協力者の募集、まちの設計、運営などを話し合いを重ね、若者が育ち合う仕組みが内包されていることでも注目されています。 

参加する子どもは県内の小学4~中学3年生約400名。開催場所は高知市文化プラザ「かるぽーと」。子どもたちは約40種の職業体験や遊びの他、市長や議員となり、こどものまちのありかたも検討していきます。保護者は参加できませんが、活動の様子は写真展やビデオなどで見ることができます。働いて得た地域通貨「トス」は後日商店街で買い物ができる仕組みもあります。

子どもたちが職業体験やまちの運営に関わることで、社会のしくみや一人ひとりの権利と責任に気づき、協力し合ってまちをつくることができる異年齢間のこども同士のコミュニケーションの場となっています。

 

以上のように、「こどものまち」と言っても対象年齢や地域や開催場所などがさまざまです。しかし共通しているのは、子どもたちが社会の疑似体験を通して本当のコミュニケーション能力を高め、生きる力を育てること。

一方で取材を通して思ったことは、大人の繋がるチカラ、育てるチカラも試されていると感じました。各地でこのような活動が広がることを願っています。