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日常の「買い物」で地域の環境保全に貢献する 高知県香美市 土佐山田ショッピングセンターの取り組み

日常の「買い物」で地域課題の解決に役立つことができたら、気軽に社会貢献ができるのでうれしいことだ。

高知県香美市にある土佐山田ショッピングセンター(代表取締役社長 石川靖)では、対象商品を購入することで地域活動に寄付ができる取り組みを3年前から期間限定で実施しており、今年は7月29日から9月11日まで。

具体的には、対象商品を消費者が購入すると1商品につき1円がNPOに寄付される仕組みで、農水産物から加工品、トイレットペーパーなどの日用品やお酒など、高知県内の商品を中心に約200アイテムがある。対象商品には「DONATION」カードが提示され、消費者が商品を選ぶ際の参考となっている。8月30日までの寄付額は155,244円ということで、この1円に消費者の気持ちが込められている。

寄付つき商品チラシ

今年の寄付先は「三嶺の森をまもるみんなの会」(代表:依光良三)で、この地域を流れる物部川の源流域の森でシカの食害から森を守る活動に送られる。この地域は、シカの食害が顕著になる前は大雨が降っても持ちこたえられる「盤石な森」であった。しかし2007年以降は非常にもろい「脆弱な森」になっているという。この団体は2007年から活動しており、シカから樹木を守るため網で巻いたり、防護柵で植物の保護域を作るなどの他、裸地化しもろくなった山肌に土砂流出防止のマットを貼るなどの活動を行っており、その効果は徐々に現れてきている。また、地域のこどもエコクラブの活動にも関わっており、子どもたちが流域環境を関連づけて考えるきっかけとなっている。

寄附付き商品4 エコクラブ新聞

土佐山田ショッピングセンターとこの団体との出会いは、2016年1月29日に行われた「つなげよう、支えよう森里川海ミニフォーラムin高知・物部川」で、石川社長が依光代表の講演を聞いたことから始まった。石川社長は「子どもの頃泳ぎを覚えたのは物部川で、山にも行ったこともあった。しかし、その後何十年も川や山の事は意識から遠ざかっていた。この機会に山に行くと、以前はスズタケが生い茂り登山道との区別が分かりやすかったが、今は何処でも登山道のような感じでその変わり様に驚いた」ということだ。

土佐山田ショッピングセンターの社是は、「売り手よし、買い手よし、地域よし」の「三愛主義」。買い物することで地域が良くなることを目指した今回の取り組みは、スーパーの本業を活かした社会貢献活動として注目される。消費者にとっては寄付つき商品を購入することで活動を支援する「参加」の意識が芽生え、NPOにとってみても活動資金の確保とともに支援の層を広げられることで活動への励みにつながることとなる。

地域課題解決につながる多様な工夫に今後も注目していきたいものだ。

 

サバイエンスキャンプ夏2016

夏イベントの代名詞のひとつ、キャンプ。徳島県では、サバイバルとサイエンスの要素を掛け合わせた一風変わったサバイエンスキャンプ(とくしまエコキャンプ実行委員会主催)というものが毎年開催されていると聞き、徳島県那賀町の鷲敷野外活動センターへ取材に赴いた。

 「一風変わった」と前置きしたが、何が変わっているのか。実はこのキャンプ、子どもの主体性を開かせることを最大の目的としており、詳細な内容は予め設けられていない。予定表を見せていただいたが、実に簡素。何が行われるのか、外部の者が見ただけで判別できるものは少ない。

 取材は、3泊4日のキャンプ2日目におじゃましたのだが、この日の予定は、「ラフティング」、「エコプログラム」、「フリープログラム」、「ナイトプログラム」とだけ書かれてあった。

午前午後のチームに分かれ、ラフティングとエコプログラム(この日は、徳島環境カウンセラー協議会の津川なち子氏によるフードマイレージ講座)に向かう班がある中、フリープログラムとしてお菓子作りやボール遊びなど他のことを始める子どもたちの姿も見られた。

  フードマイレージ講座   OLYMPUS DIGITAL CAMERA

とくしまエコキャンプ実行委員会委員長の鈴鹿剛氏に訊ねると、「子どもたちが自発的に提案してきたプログラムは、危険がない限り採用してやらせます。こちらが準備したプログラムに参加するかどうかも、子ども達自身で選択させます。」とのこと。

詳細な内容がないと前述したが、実は全くの白紙という意味ではない。ネタをいくつか事前に準備してある。しかし、それに子どもたちが興味を持つかは分からない。準備していても出番のないネタも当然あるし、準備していないプログラムを子どもから提案されることもある。あくまでも、子どもの主体を尊重してその日のタイムスケジュールが組まれていく。

 こうなってくると、スタッフには臨機応変、突発的な動きを求められるはずなのに、意外とゆったりと過ごす姿が見られた。これに関しては、鈴鹿氏から印象的な回答が得られた。

「朝のミーティングをとにかく大切にしている。ここをきちんとこなすことで1日の自由(フリー)が決まる。朝のミーティングがうまくいかないと、その日1日が不自由になるのです。」

時間をきちんと守るなど、「自由の枠組み」を与えて自分で考えさせ、自発的な行動へと導く。ここでスタッフにはミーティングの仕切り方を、子どもたちには自由を得るための決まりを身に付けさせていることが分かった。

また、スタッフの人材育成も兼ねている点において特筆すべきは、キャンプという子どもの心が開放される場において、スタッフには“子どもの心に寄り添う”ことに重点を置かせ、対応させているということだ。これから中心的指導者として育つスタッフにとって、このキャンプは子ども達一人ひとりとの距離の詰め方を体得する場にもなっている。

 参加している子ども達はリピーターが多く、スタッフの中にも最初は参加者だったが学年が上がることでスタッフとして加わっている人も見られた。「なんでもやりたい放題で自由だから」ではなく、「思い切り自由を楽しめる方法」を体験を通して身に付けることができるからこそ何度でも参加したくなるのだろう。スタッフ含め参加者約70名の笑顔が、陽射しよりもいきいきと輝いているキャンプだった。

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コウノトリとナベヅルフォーラム

兵庫県豊岡市で放鳥されたコウノトリが、徳島県鳴門市で巣作りを始めた記事が新聞等で紹介されるとともに、四国内では、コウノトリだけでなく、ロシアから飛来するナベヅルの話題を耳にするようになった。

どちらも絶滅が危惧されており、なぜ、四国の各地に飛来するようになったのかが気になる中、2016年7月、徳島市内でコウノトリとナベヅルフォーラムが開催された。

専門家からそれぞれの生態と習性に関する概要説明の後、専門家と生産農家をまじえたパネルディスカッションが行われた。野生復帰したコウノトリに選ばれた理由や四国へのナベヅルの飛来数の増加など、経年変化をみないとわからない部分があるにせよ、餌付けをしていない状態で、エサとなる生き物が多く、豊かな自然生態系があることが鍵となったのではないかという意見が出た。

確かに、鳴門市のコウノトリが巣をつくった場所の周辺には、レンコン畑が広がっている。さらに、ナベツルが飛来しねぐらにしているのは、那賀川の中須でその周辺には水田が広がっている。

野生のコウノトリやナベヅルが、広大な土地から特定の場所を選択するには、本能的な選択基準があるはずだ。もし、その基準が可視化され、私たちが土地改変や開発、環境保護を進める際の尺度とすることができれば、生物多様性の主流化に向けての更なる一歩が踏み出せるのではないかと期待している。今後の関係者からの成果報告や動きに着目したい。

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