2017/07/28

シカの食害から三嶺の森を守る活動をまとめた冊子の発行

三嶺(1,894m)は、四国の徳島県と高知県の県境にあり、太平洋に注ぐ物部川源流の一つの山でもある。徳島県側では「みうね」と呼ばれ、高知県側は「さんれい」と呼ばれているこの山は、植林が多い四国山地では希少な自然が残る数少ない山として、多くの登山家に親しまれてきた。しかし、2000年頃からニホンジカ(以下、シカ)による地面を覆っていた下草や樹木の食害が現れ始め、山の姿はあっという間に大きく変わった。ものすごいスピードで、山肌は裸地化し、樹木は立ち枯れ状態となった。

「三嶺の森を守るみんなの会」代表の依光良三氏は「多少の雨ではびくともしなかった森が脆弱な森に変わった」と言う。大雨が降ると裸地化した山肌は崩れ、流れた土砂はダムにたまり、河川の汚濁は長期化、アユなどの生き物にとってもすみにくい環境に変化していったということだ。森の状態は、下流域にまで大きな影響を及ぼすのだ。

2007年その自然を再生しようと、NPOや研究者などさまざまな立場の人や組織が集まり、この会の設立となった。だれもがこの愛すべき三嶺の自然の復活と山の崩壊を防ぐことを願い、子どもから専門家まで実に多様な主体が、多様な方法でその保護に携わることとなった。まさしく産学官民の大きな協働取組である。そして約10年。今回発行した冊子には山嶺の自然豊かな森の変容と、人々の活動が写真で分かりやすくまとめられている。特にこの10年間の保護活動と植生の調査・検証、食害と土壌浸食の関係性の調査結果は、今後の活動や他地域での活用が期待される。その他、協働の取組の観点からも大変参考となる冊子である。

この取組は昨年度の四国環境パートナーシップ表彰の森里川海部門賞を受賞した。森の再生は道半ばのところ、地元のスーパー「土佐山田ショッピングセンター」がこの活動に共感し、7月31日までの約1ヶ月半の間、この活動を支援する取組が実施された。対象とした商品を1点購入すると売り上げの中から1円の寄付が団体に送られる仕組みで、消費者が地域の活動を応援できる身近な取組として注目されている。

四国では、シカによる食害のうち新たな被害も出ているとのこと。人と自然のよりよい共存に向けて、四国での経験は一冊の本にまとめられた。ぜひ、皆さんにもお勧めしたい。